マーケティングとは? ~マーケティングのキホン~
マーケティングとは?
「マーケティング」とは何でしょうか。
「マーケティング」は英語にすると「Market+ing」です。
Marketとは「市場」もしくは「お客様」のことで、その動名詞ingなので、
一言で言うと「お客様に働きかける」ということになります。
ですからマーケティングでは、事前調査を行い「市場・お客様の求めていること」をよく知ることこそがとても大事です。
究極的には、マーケティングとは「商品・サービスがひとりでに売れるような状態にする仕組みをつくる」ことでしょうか。
ドラッカー氏は、「マーケティングの理想は、販売を不要にするものである。」と表現しています。
「販売」や「営業」と「マーケティング」の違い
よく混同される「販売」や「営業」は「直接的な接客や顧客対応」が中心であり、「どう売るか?」ということです。
対して、マーケティングは「全社」での取り組みです。
お客様と接する前の「企画〜開発〜製造〜流通~販売促進」に至るまで「お客様の求めに合致するような商品・サービスにするための活動すべて」が含まれます。
イケアの事例で考える
スウェーデン家具チェーンのイケアの日本での新路線を例にお話しします。
イケアというと
「郊外にある広々とした店舗をゆっくりと楽しみながら自分の欲しい商品を探す」
「大型倉庫から自分で商品を取り出して持ち帰り、(基本的に)セルフで組み立てる」
「洗練されたデザインでありながら価格も比較的安価」
というイメージではないでしょうか。
そのイケアが一昨年(2020年)から都市部に店舗(原宿・渋谷・新宿など)を出しました。
都市型の店舗は「家具を選ぶショールーム」をイメージしているそうです。
そして、店舗ではお客様は実物やサイズ感をみながら家具を選び、実際にはネット(ECサイトやアプリ)で購入します。
都会の暮らしを徹底的に調べ上げ、そこに暮らす人に寄り添う店を作りました。
日本には日本の住宅事情があるので、商品サイズを見直して、狭い部屋にマッチする家具を改めて設計しました。
ここは、「企画~開発~製造」に当たる一連の活動です。
いずれの都市型店舗も「大型の乗り換え駅の近辺」、「若者が何気なく集まるエリア」にオープンしました。
そして、原宿店には菓子類や文具、電池やケーブルなどの雑貨を売るコーナーがあったり、
7フロアある渋谷店のワンフロアをレストランにしたり、
新宿店では「スウェーデン バイツ」という量り売りのデリメニューを提供したりと
必ずしも「家具を売る」ことだけが目的ではなく、
そこに対象となる「ターゲット層が足を運ぶ」、「ブランドを認知してもらう」ことが店舗の存在意義となっています。
さらにイケアは2020年にスマホ向け「IKEAアプリ」もローンチしており、この都市型店舗に合った購入ルートも用意されています。
ここは、「流通~販売促進~ブランディング」に当たります。
まさに全行程に「マーケティング戦略」が含まれていることが見えてきます。
書道家 武田双雲の事例で考える
もう一つ、マーケティングの本質を見る事例をご紹介します。
書道家の武田双雲はあるとき、会社の同僚の名前を手書きで書いたそうです。
その人が「私は自分の名前が嫌いだったけれど、自分の名前が少し好きになれたように思う」と泣き出した。
それがうれしくて会社を辞めて名刺の名前を筆書きで書くという仕事を始め、そこから書道家としての道が始まったそうです。
いくら名言であったとしても、いくらとても美しい立派な文字で書かれていても売れるかはわかりません。
「相手が求めるもの」だったから自然と売れたのです。
マーケティング戦略の基本とフレームワーク
マーケティングの基本的な戦略の考え方には3段階あります。
「Who(だれに)」「(What)どんな価値を」「(How)どのようにして提供するか」 です。
この3つを考えるためによく使われるフレームワークをご紹介します。
1.STP(「だれに」を考える)
セグメンテーション(Segmentation):
具体的にはマーケットをどこに考えるか「絞り込む切り口」を考えること。
年齢や地域、男女、「旅行好きな人、そうではない人」など。
ターゲティング(Targeting):
切り口を考えたら、その中で「ねらう」のはどこにするかを具体的に決めます。
市場全体の中で自分たちの顧客と想定される層の「人数」や「特性」、「ライフスタイル」などを考えます。
ポジショニング(Positioning):
具体的な顧客層が決まったら、その人たちに対して他製品とは違う自分たちならではの「ウリ」「差別化」などのアピールポイントを明確にします。
2.3C分析(どのような価値を)
以下の3つの頭文字「C」をとって「3C分析」と呼ばれています。
Customer(市場・顧客):
だれをお客さま(顧客)とするか。
顧客のニーズはなにか。
市場規模や成長性はどのくらいかなど顧客について調べ、考えられることを書きだします。
社会的な背景・変化を知るためのマクロ分析と業界の構造や競争環境を知るためのミクロ分析を行いますが、マクロ分析はPEST分析(※1)、ミクロ分析はファイブフォース分析(※2)という手法が用いられることが多いです。
Competitor(競合他社):
競合他社の状況(規模やシェア、ポジションなど)や競合の製品やその特徴(強み、弱みなど)を書きだします。
Company(自社):
市場分析や競合分析をまとめ、それに対して、自社がどのような手を打つことができるのかを検討します。
自社の現状(経営資源、売上高、市場シェア、収益性、販路、技術力、組織力など)の様々なポイントに着目し、自社の強みと弱みを把握します。
この際にはVRIO分析(※3)という手法がよく用いられます。
3.4P分析
最後にどのようにして提供するかという実行戦略が大事ですが、これはマーケティングミックスとも呼ばれています。
以下の4つのP(4P)の最良な組み合わせを考えます。
Product(製品):
商品構成のことです。
自社の「製品を通して顧客ニーズをどう満たすか」「製品を通して提供できるメリットは何か」
Price(価格):
商品を販売する価格のことです。
この商品の価値に見合うか、どのような位置づけとするか、赤字とならず、適当な利益を確保していけるかということも考慮します。
この価格は誰がお客様になるか、この商品にその金額を払ってもらえるのかという視点でも大事なポイントです。
Place(流通):
どこで売るかという流通経路のことです。
ターゲットとなるお客様や商品の位置づけなどを考慮して最も買いやすい場を用意することが必要です。
Promotion(販売促進):
いつ、どこで誰に目につくかが大事なポイントです。
ターゲットとなるお客様に届く、認知されるように、そして購入意欲につながるような活動が必要となります。
広告や、最近ではウェブマーケティングも重要です。
レクサスの事例で考える
一連のマーケティング活動がブランディング構築とつながっている事例として有名なのはレクサスです。
レクサスは「高品質」「高性能」「洗練された」かつ「カジュアル」という位置づけの車です。
ターゲット層は、「ベンツ」などの高級車ではなく、革新的、高品質なものを求めるお客様です。
流通経路としては、「レクサス」専用の高級感あふれる店舗を作りました。
これまでの「ディーラー=売り込む人」というイメージを一新、「オーナー専用ラウンジ」を作り、
販売スタッフは「レクサスカレッジ」という学校で、特別な教育を受けたり、帝国ホテルのコーヒーの淹れ方のレクチャーを受けたりとこれまでの「車の売り方」とは全く異なる「お客様との関係性」を築いています。
販売促進としては、会員制ゴルフクラブに広告を流したりとターゲット層の目に留まる、話題に上がるような工夫をしています。
また、レクサスの世界観を広げるためにブランド活動発信拠点を表参道に作っています。
がそこにはなんとほとんど車を置いていません。
「食やアートを通してイベント体験」をできる場で従来のターゲット層以外へのブランド認知を目的としています。
<マーケティングQuiz> 綿あめ屋に挑戦!
最後にマーケティングに関連してお客様が何を求めているのかを考えるクイズを紹介します。
あなたは、お祭りの屋台で一つ300円の綿あめを売っていました。
順調に売れていましたが、途中から小雨がぱらついてきてしまいお祭りのお客さんが少なくなってきてしまいました。
売上も半分くらいになりそうです。
綿あめの機械も借りているし、材料も仕入れているのですでにお金がかかっている・・・。
「何とかして、売り上げをあげないと」と思うのですが、このまま普通にお店を出していてもお客さんは少ないままです。
お客さんが少ないので暇も持て余しています。。。
あなただったら、こんな時どうしますか?
お客さんを増やすためにどんな工夫が考えられるでしょうか。
(一度考えてみましょう)
しばらくすると値段を600円にしたのに、お客さんも少し増えてきました!
さて、何をしたのでしょうか。
一つの例をご紹介します。
綿あめづくりを体験できるようにしたのです。
お客さんの全体数も減ったので、時間もたっぷりあります。
そこで綿あめを売るだけではなく、「自分で綿あめを作ってみる」体験を商品にしてしまったのです。
綿あめづくりは自分ではなかなか経験できないこと、お祭りではヨーヨー釣りや射的など自分でいろいろとやってみる!ことを楽しみにしているお客さんも少なくないことからこの作戦は上手くいったようです。
「体験の様子をSNSにアップすると綿あめを1.5倍増し!」などのサービスをつけてもいいかもしれませんね。
他にももっといいアイディアがあるかもしれません。
あなたもぜひ考えてみてくださいね。
ところで、この作戦で「綿あめ屋」は無事赤字にならずに済んだのでしょうか?
次回は会計についての記事を予定していますので、「綿あめ屋」の損益分岐点について一緒に考えてみたいと思います。
お楽しみに!